昭和45年8月8日 夜の御理解
今日、午後からでしたが、んー、伊万里の竹内先生が、昨日見えて、今日もまた見えている、丁度、昨日見えたときに、カバンを忘れておられたという。また、カバンを、まあ、勿論、市長さんのカバンですから、大事なカバンに違いありませんが、今日取りに見えたら丁度、あの、長男の政教さんが帰ってきておりましたら、一緒に乗せて帰られたんですがね。丁度、私、裏で、御本部から帰ってきました修行生の方達を、まあ、みんな一緒に、まあ、信心の色々四方山話をしておるとこでございましたから、んー、先生にあっちに寄って頂いてから、色々信心話をさせて頂いたんですが、その中にね。えー、先生が、何とかかんとか、ひょこっとこんな話をされるんですよ。えー、先生は芝居のことは、あんまり詳しくないのでしょう。五代目菊五郎が、まあ、女形だったというような話をなさったときの、いわゆる、名人の、名人談なんですよね。実を言うたら、女形ではないのですけどね。五代目菊五郎というのは。そら、もう、天下の名優でした。当時の団十郎と、双肩、もう、肩をならべる程しの、ま、名優でしたがね。ま、大変な本当に名優でしたが、その息子さんが、また、有名な六代目という訳ですね。このう、五代目が亡くなるときにです。もう、いよいよ臨終近いという事になった時に、その、奥さんがね。もう、さめざめと枕元で泣かれたと言うんですよね。そしたらね、もう、今にも息を引き取ろうかというごたるその、おー、いわゆる、五代目菊五郎が言うたことがね。お前の、その、泣く姿勢が悪いち言うたち(ふっふふ)もう、本当に驚く、その根性たるやねえ。もう、死ぬるまで、いわゆるもう、役者は、いわゆる、その姿です。例えば、もう、自分の動きの全てが踊りの形になっておらなければいけないち言う。例えばその、実際泣きよっても、その、泣きよる姿がですね、もう、その、役者の姿でなければいけんというのが、まあ、大変な私は、根性だと思いますね。もう、(笑いながら)自分は息を引き取ろうとしておる人がですよ。家内がそこで、さめざめと泣いとる。泣いてもいいけど、その泣く姿が悪いち言うてその、口上を言うたという話を聞かせて貰うとね。あー、なるほど、根性ということはね、それは、私も丁度、今日、あちらから、あの、歌舞伎の本を贈ってきとりましたから、読ませてもらったところに、今の、大阪の雁治郎さんがね。孫さん、扇雀の息子さんですよねえ。息子さんがお爺ちゃんの、その、似顔絵を描いたち言うんですがねえ。お爺ちゃんの似顔絵。普通のお爺ちゃんなら、はー、こら、良う出来たなあというところで
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